児玉樹・作品 -優しく幸せドタバタ漫画家-

児玉樹・作品 -優しく幸せドタバタ漫画家-

漫画には様々な想いや世界が詰まっています。
どの作品も基本的には読者を楽しませようと日々進化しています。
バトル・異世界・恋愛・SF・ファンタジー・ギャグetc…
ジャンルも様々ですし、
オリジナル以外にもコミカライズやアンソロジーなど原作有りの作品も。
今回紹介するのは、原作を丁寧に活かした上質なコミカライズを筆頭に、
独自の世界観でモブキャラすら魅力的に仕上げる漫画家「児玉樹」先生です。

作風と世界観

児玉先生の描く漫画の特徴は、「ドタバタほのぼのラブコメディ」です。
主要キャラクターに魅力があるのは当然ですが、
モブキャラクターが本当にモブなのかと疑問に思うほどに魅力的で、
思わぬ出世をしたキャラクターも存在します。
また明確な悪意がほぼほぼ存在せず、
温かく優しい物語で、安心して読み進めることができます。

妖怪や福の神を始めとした、
不可思議や超自然存在が物語の1つの柱となっています。
また、全体的に和風テイストなので取っつきやすさがあります。
個人的感想ですが荒んだキャラクターも読者も幸せになれる、
一服の清涼剤的な感覚で楽しんでいます。

上質なコミカライズ

ゲーム原作のコミカライズが非常にクオリティが高いことでも知られています。
原作設定や雰囲気・世界観を丁寧且つ細やかに仕上げ、
随所にオリジナル要素を加えることで一層の味を出しています。
基本原作に忠実でありながら、
原作では拾いきれなかった要素の補完も行うシーンも魅力の1つです。
コミカライズから原作へ逆輸入された要素もいくつかあり、
モブキャラから攻略可能ヒロインへ昇格させた事例もあります。
大体何かと微妙な評価になりがちなゲーム原作コミカライズも、
児玉先生の作品は評価が高く、
良作コミカライズの話になる度に話題になります。

児玉節

古今東西、恋愛物やラブコメは多数存在して進行形で生まれています。
物語は様々な節目やターニングポイントが存在します。
作品的には盛り上がる見どころです。
日常が一気にシリアスやドロドロ展開になんてことも。
好きな人は好きでしょうが、個人的に苦手な展開でもあります。
しかし、その負の展開を正の結末にもっていけるのならば別の話です。
児玉先生はその展開が非常に上手です。
キャラクター一人一人の「想い」や「行動理念」が純粋なので、
読んでいて気持ちが良いです。
こう言う思考や生き方ができれば、
世の中が幸せに良くなるのにと思ってしまいます。

これらを含めて「児玉節」と言いましょうか、
独特であり粋な論理が他の漫画家に無い浄化作用が生まれるのです。

主な作品

コミカライズ作品
・Canvas2 エクストラ・シーズン/原作:F&C FC01(全1巻)
・Canvas2 ~虹色のスケッチ~/原作:F&C FC01(全4巻)
・FORTUNE ARTERIAL/原作:AUGUST(全7巻)
オリジナル作品
・てるてる天神通り(全5巻)
・まほマほ(全3巻)
・はらほろキーパーズ!(既刊2巻だが、打ち切りになった模様)

いずれも角川コミックス・エースより販売されています。

ハクメイとミコチ -「こびと」達の面白い日常マンガ-

ハクメイとミコチ -「こびと」達の面白い日常マンガ-

新年最初の紹介は2018年1月より始まるアニメの原作、
「ハクメイとミコチ」(作:樫木祐人)です。
タイトルがそのまま主人公の名前であり、
二人の日常を綴った物語です。

あらすじ

背丈は9センチ。
森の奥で暮らす彼女たちは、とっても小さいのです。
ハクメイとミコチ。緑深き森で暮らしている、小さなふたりの女の子。
木の洞に家を造ったり、葉っぱを傘にしたり、昆虫や鳥の背に乗ったり……
身長9センチメートルなら、そんな事も出来るのです。
そーっと覗いてみませんか?
穏やかで愉快で、とびきり愛らしいその生活を。

不思議な世界観

この世界の住人は、「こびと」だけではありません。
動物や昆虫も登場し、「こびと」と同じ言葉を使いコミュニケーションをしています。
一緒に仕事や料理・商いをしたりetc…


まぁ一部動物、魚なんかは会話ができないの為か、
釣られたり料理されたりしていますが・・・
「こびと」が出てきて動物たちと意思疎通している時点でファンタジーっぽい世界ですが、
基本的に優しくて童話的な世界感です。
剣や魔法で争うようなことはせず、
世界征服を企む魔王も組織もありません。
ただし「大真面目な戦争ごっこ」や「誘拐」なんて事件も起こったりします。
まぁその発端や戦術や解決までも含めて、
いかにも童話的だなと感じるものではありますが。
また魔王はいませんが付喪神は存在するし、
独自の科学技術が登場します。
今のところ人間は登場してませんが、
新聞屋さんや郵便屋さんに鉄道があることから、
それなりに進んだ技術や文化を有しています。

「こびと」視点で描かれる世界

身長9cmが故に世界の大半が壮大に描かれています。
コーヒーを淹れるのも一粒のコーヒー豆を砕きますし、
ブルーベリーでさえも林檎のように切り分けてみんなで食べます。
大根なんかを一本運ぶためにも業者に頼まなければなりません。
住んでいる場所も木の洞でも十分広々としています。
木全体が1つのマンションの様な役割を果たしている描写もありますね。
カメの甲羅に家を建てるのはTHEファンタジー。(そのカメは特殊なアイテムで骨だけで動いている!)
移動手段も動物の背中に乗せてもらったり、
紙ヒコーキで滑空するなど浪漫があります。


サイズがサイズなのでイタチやタヌキなどの動物がかなり大きく描かれており、
コミュニケーションが取れる動物が街中を「こびと」と一緒に闊歩している様は童話的な世界です。

 

得意分野に特化する

現代日本では好きな事を仕事にするのはとても難しいことです。
嫌々仕事をしている人も多いのではないでしょうか?
しかし「こびと」の世界は我々とは違います。
手先が器用なハクメイは修理屋や大工仕事を、
料理が得意で裁縫も熟すミコチは、保存食や日用品を商店に卸しています。
大工や鉄道員に屋台・飲食店経営などなじみのある職業から、
謎の技術屋や吟遊詩人にキャラバンなど如何にもファンタジーな職まで。
みんな活き活きと楽しく日常を送っています。


やりたい事をしているので、仕事はかなり熱が入ります。
職人気質が至る所で発揮されていて、読んでいて気持ちが良いです。
まぁこれ本当に仕事なの?とかこれ仕事で生計が成り立つの?
みたいな職業も存在しますし、
熱い職人気質が、悪い意味で発揮される場合もありますが。

飯テロ注意!

主人公二人はよく食べよく飲みます。
ファンタジーな世界観ですが、そこで食くされる物は現実でも手に入る食材です。
ただし作中では、すこし独特な調理だったりあまり馴染みの無い調理法だったりします。


揚げ山芋や冬瓜と鯖の揚げ浸し等のこんな調理法があるんだと言う物から、
リモンチェッロやジュレップなどのお酒、
刻んだバジルを入れた木苺ジャムやブドウパンにクリームチーズを塗るなど一手間加えた物。
他にもキュウリのサンドイッチや稲荷寿司、生姜天やミネストローネなど食欲が刺激されます。

アニメに期待

1月12日(金)より放送が順次始まるアニメです。
公式PVを見た感じなかなかいい出来だと思います。
著者は基本的に原作厨ですが、かなり期待しています。
具体的には通常3倍モードで番組予約しますが、
放送画質で予約設定したレベルです。
作画は勿論、BGMや声優さんの演技にも期待です。
現在公式サイトではカウントダウン企画も始まっており、
いよいよスタートだなぁーと気分が高揚します。

原作コミックは現在1~5巻まで発売されており、1月15日には最新6巻と副読本「ハクメイとミコチ ワールドガイド 足下の歩き方」が発売されます。

新米姉妹のふたりごはん -実際に作って食べてみる系漫画-

新米姉妹のふたりごはん -実際に作って食べてみる系漫画-

著者はオタクであると同時に、「食べる」ことも大好きです。
グルメ漫画や料理漫画も最近は増えてきて、
国内外問わず変わった料理や食材、地方でしか消費されないような珍味、
果ては異世界独自のゲテモノまでとヒトは様々なモノを味わいます。
今回紹介する漫画は、作者が実際に調理してみて、
美味しかった料理だけを描くというそんな作品です。

 

あらすじ

 

両親の再婚により、突然姉妹となったサチとあやり。
言葉数が少なく目つきの鋭いあやりに対し、サチは物怖じし、
これからの同居生活に大きな不安を感じてしまう。
そんな時、海外出張中の父親から届いたのは生ハムの原木で──。
料理を通じて絆を深めていく新米姉妹から目が目が離せない!
幸せな笑顔はおいしい料理から生まれる、新鮮クッキングストーリー!
(公式サイトより抜粋 http://daioh.dengeki.com/special/futarigohan/)

 

浪漫溢れる料理がイイ

 

この漫画の魅力は「特別感があり且つネット通販などで購入可能な食材や器具」です。
あらすじにもあり、第一話の「生ハムの原木」からして非常に浪漫に溢れます。

コンビニなんかに行けばスライスされた物が購入できますが、
元々は豚の脚なので相当デカイです。

(引用https://www.amazon.co.jp/gp/product/4048656538?ie=UTF8&tag=dengekidaioh-22&linkCode=as2&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4048656538)

これは第一巻の表紙なのですが如何にデカイかが伝わります。
ちなみに品種・熟成期間やその他条件次第ですが後脚で8kgほど3~4万ほど、
前脚なら4kgほどで1万円台です。
最初に購入する際は、台とナイフ付きの物を選ぶと良いでしょう。
って作中のコラムで紹介されていてホイホイされました。
浪漫と言えば「ラクレットチーズ」。表紙の左下の方の丸い物体です。
これを適当に切り分けてチーズの切り口を温め、
皮が香ばしく中がトロリとなったところを削いで、
茹でたジャガイモやパンにのせていただきます。
アルプスの少女ハイジに出てきたアレです。
いやもうほんと浪漫の塊です。
姉妹の両親が海外出張で世界を旅している恩恵で、
色々なものが送られてくるのも漫画ならでは。
とあるお話ではあやりのおばさんが登場します。
彼女は猟師を営んでおり、
最近何かと話題のジビエ料理なんて言うのも登場です。
そのお話では鹿肉のロティと言う料理を作っていました。
鹿肉をネットで検索したら、思ったよりも安く品数も豊富に販売していました。
イメージ的には、山間部の道の駅なんかでしか売ってないと思っていたので以外でした。
ほんと便利な時代になったものですねー。

 

お手軽?料理イイ

 

料理は食べるのもイイけど、作るのもまた楽しいものです。
最近は様々なwebサイトでレシピが公開されています。
cookpadで公式アカウント「新米姉妹レシピ」が公開されています。
(https://cookpad.com/kitchen/15206113)
著者も漫画を参考にいくつか実際に作った料理があります。

・生ハムサンド
・たまごふわふわ(江戸時代のセレブな卵料理、現在静岡県袋井市のB級グルメ)
・夜食のスープ
・みぞれ鍋

こんな感じでしょうか。
共通しているのはどの料理も「お手軽」です。
レシピもシンプルだし、野郎がなんとなくで作れるのがポイントが高いです。
ただし楽ではないです。主に手にきます。
卵をひたすらかき混ぜたり、大根おろしは重労働デス。
個人的にはみぞれ鍋は大当たりでした。
最初に作ったときは、「沢庵臭」が充満して大変でしたけど・・・
(一度絞って水にさらして硫黄成分を抜くと良いですよ!)

 

便利な調理器具がイイ

 

料理担当あやりの趣味は調理器具を集めることです。
彼女の部屋には様々なコレクションが保存されています。
まだ詳しく描かれていませんが、彼女の過去に何か関係があるようで・・・
話を戻して作中に登場するガジェットを幾つか紹介しましょう、
まずはその見た目と用途でインパクトがあったコレ。
「エッグシェルカッター」です。
その名の通り、卵の殻を割る道具です。

(引用http://daioh.dengeki.com/special/futarigohan/)
見た目がなかなかオシャレさんです。
作者曰く、卵のブランドによって殻の硬さが違って力加減が難しいとの事。
次は何かと応用が利きそうな「ガスバーナー」。
著者的には寿司屋とかで炙りサーモンとか炙りシメサバとかのイメージですが、
作中ではクレームブリュレとかオシャレなスイーツを作っています。
スイーツと言えば、「アイスクリームメーカー」と「アイスディッシャー」なる道具も登場します。
前者はその名の通り、家庭でアイスクリームを作る機械です。
後者はアイスクリーム屋なんかでアイスを盛り付けるときに使うアレです。
ガスバーナーとかは家に有ってもいいかなとは思いますが、
アイスクリームメーカーは、コンビニに行った方が楽だし種類もありそうですし。
エッグシェルカッターに至っては・・・
とまぁ日常生活では恐らく使わないというか、
存在を認知されない調理器具たちを知ることもまた一興かと。
作中であやりも言っていますが、物によっては絶対に必要な訳では無いけど、
あると便利だったり変わったものが作れるのは面白いですよね。
これから年末年始で人が集まりますし何かしら探してみるのも良いかもしれません。

 

迷ったら読んでみろ!食ってみろ!

 

もう既にお気づきかと思いますがこの漫画は深夜に読むのは危険です。
非常に「飯テロ」成分濃厚デス。
さて本作は、単行本4冊が現在発売されています。(続きはよ!)
また下記サイトにて、一部試し読みができるので興味が出てのなら気軽にチェックできます。
(http://seiga.nicovideo.jp/comic/18981)
(https://comic.pixiv.net/works/3287)
気軽と言えば、生ハムの原木に代表されるように、
ネット通販などで簡単に入手できる食材を吟味して、
リアルで食べてみることを激しくオススメします。
サチやあやり達が食べている物をリアルで食べるのは何か感慨深いものがありませんか?
各話の間には「料理漫画研究家」とか言う謎の肩書を持つ杉村啓氏によるコラムも収録されています。
独自の視点と言いつつも、結構面白くて役に立つ知識が披露されています。
登場人物は少ないですが、どのキャラクターも活き活きと描かれています。
特に食べる担当サチは、本当にコロコロ表情が変わって可愛い。
露骨な萌えとは違った萌えデスw
主要キャラクターが全て女性であり、
女の娘同士が料理を通じて盛り上がっていく様子は「イイモノ」です。
今後とも仲良く美味しい料理を食べて欲しいものです。

(引用https://www.amazon.co.jp/gp/product/4048927167/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4048927167&linkCode=as2&tag=dengekicomic-22)
姉妹の過去話も気になりますがどうなんでしょうね。
読んでいてほっこりと温かくなり、
そしてお腹が空くそんな作品の紹介でした。

 

製品情報

タイトル   新米姉妹のふたりごはん

作者     柊ゆたか

出版社    アスキー・メディアワークス

掲載誌    月間コミック電撃大王

 

イレブンソウル -ケーキ屋に並ぶかつ丼のような漫画-

イレブンソウル -ケーキ屋に並ぶかつ丼のような漫画-

まず始めに今回紹介するイレブンソウル(以下士魂)はサッカー漫画ではありませんので悪しからず。
ジャンルはSFバトルアクション青春群像劇哲学味ラブコメ仕立てと言ったところでしょうか。
まぁ要約するとバイオハザードで生まれた化け物を、
訓練された強化人間がパワードスーツみたいなものを使って駆除するってお話です。
戦闘作画は圧巻の一言で、どの戦いも熱く激しく魅せてきます。
特に設定や世界観的にガンパレやマブラヴ、
進撃やシドニアって単語に反応する人種ならばより一層楽しめる作品でしょう。

あらすじ

 

21世紀中盤、人類の文明世界は大きな試練を迎えた。
発達した遺伝子技術は世界中で巨大な市場と莫大な利益を生み、研究が加速。
やがて自らの欠点を他の遺伝子を取り込むことで補完する発展型成長遺伝子が発見され、
人類は遂に「不老不死」の夢に肉薄した。
しかし、研究機関がこの遺伝子の実験サンプルをバイオハザードしたことで事態は急変。
自然界から無制限に遺伝子を取り込み、人類の予想を遥かに超えて進化した「彼ら」は人類世界を侵略し始める。
「シャヘル」と名付けられた彼らは人類の武力を次々に撃破し、わずか2年で南北アメリカ大陸を制圧。
文明誕生より1万年…。人類は初めて自らより強力な「種」と対峙していた。
―アメリカ合衆国が世界地図から消えたその年…―
日本政府は対シャヘルのための特殊装備を有する日本「軍」を再編。
ほぼ1世紀ぶりに海外派兵を前提とした兵力を保有することとなった。
その要となったのが強化手術によって諸神経の高速化を図った兵士を、外骨格兵装に搭乗させる機甲歩兵部隊。
通称「侍」部隊である。
侍を育成、運用する首相直属の統括局は「侍所」と呼ばれ、わずか数年で世界一級の兵士達を輩出。
侍は各国のベースキャンプに派遣され、対シャヘルの戦闘において目覚しい戦果を上げた。
同時期。シャヘルに対抗すべく新生国際連合は太平洋上と大西洋上に人工島を築き、
シャヘルの南北アメリカ大陸からの流出を封じることに成功。しかしアメリカ大陸奪還は失敗し、多大な犠牲を払うこととなった。
人類とシャヘルは大海を挟んで睨み合い、侵略と防衛を繰り返す長期戦に突入。世界各国は莫大な資金を投じて軍備を強化し始める。
もはや「暴力」を除いて、事態の解決を図れるものはなくなっていた。
(イレブンソウル第一巻引用)

 

この作品を読むにあたって

 

もうお気づきかもしれませんが、士魂は重めの世界観です。
掲載雑誌にぶっちゃけ合わない漫画だったため当時著者の目に留まったのを覚えています。
描写もグロは当たり前だし、絵柄も昨今の萌路線とは違います。(まぁ別の色気はあるのですがw)
情報量が普通の漫画に比べて多く、また描き込みも細かいのが特徴です。
個人的には、電子書籍媒体での読書はあまりおすすめできません。
文字がそもそも多くて細かいので、スキャンの具合なのか潰れて読みずらいことが多々ありました。
また魅せ場であるアクションシーンを始め、見開きでの描写が多い事も紙媒体を薦める理由です。
それらを踏まえて魅力を幾つかご紹介します。

 

ヒトの持つ可能性と欲望のドラマ

 

士魂の魅力は多々あれど、やはり外せないのが主人公達の成長です。
物語の主人公・塚原武道(あだ名はたけちー)。
苺オレが好物で特技は剣道。
天体観測が趣味な穏やかで健全な青年です。
兵士向けな性格でもなく、望んで入隊したわけでもなく、入隊前の評価適性はE。
しかし何か訳アリで物語が始まる前は軍病院に三年程入院していたとかで・・・
そんな彼と同期で特Aで入隊したツンデレ秀才なヒロイン九十九五六八(つくも・いろは)に罵倒され、
時にはノックアウトされつつも、
異常甘党完璧兵士な隊長に、不思議系通信兵、釣りキチ副長、
板前工兵あんど幼馴染、餌付け狙撃兵とアットホームな部隊員に励まされ、
挫けそうなった時も、訳アリ部隊の乃木隊長に背中を押され、
とある「志」の為に侍として成長していきます。
物語的には1~7巻(第一部)がこれに相当します。
特に7巻は士魂全体で見ても屈指の名シーンであり、たけちーが主人公であることを証明します。
シュチュエーションも演出も、そして何より今までの積み重ねが遂にって感じでそりゃもうスゴイ!
バトルものなので当然ですが劇中では、人が結構な頻度で死んでいきます。
どんなキャラクターだろうと結構容赦なく退場します。
死亡フラグがちゃんと建てられる人物はまだ救いがあるのですが・・・
まぁそれもまたシャヘルとの生存競争なのです。
物語の大筋はシャヘルとの闘いなのですが、
その裏の人間同士のやりとりもきっちり描かれています。
シャヘルを殲滅した世界の戦後処理、延いては世界の覇権を念頭に置いた政治的駆け引きも1つの見どころです。
序盤からも伏線を張られているのですが、8巻以降(第二部)大きく描写されます。
そもそものシャヘル誕生もヒトの欲望が招いたものですが、
第二部に入ってからの各キャラクターの思想がダークマターもいいところで、
ヒトの裏側をこれでもかと詰め込んできます。
そのせいで士魂は第一部だけでいいというファンもいる程です。(著者の友人もその一人)
また各話タイトルも意味深と言うか厨二で楽しませてくれます。
(五六□八でラッキーレス、□□七□でホーリーナンバーなどなど。)
物語の冒頭には偉人や軍人の名言、童話や神話・幸福論なんかの引用で始まることが多いです。
特に「オズの魔法使いへ」のオマージュになっている設定や構成は第二部の重要な要素です。
解る人からすればより一層、作者の意図がくみ取れるでしょう。
まぁ純粋にカッコいい(厨二的)のですけどね。

 

たけちー電波相談室

 

漫画を読む上でストーリーが魅力的なのは当然です。
ここからは士魂を士魂たらしめる要素の紹介です。
突然ですが皆さん「幸せ」って何ですか?
「生きる」ってなんですか?
なんで「人を殺してはいけない」んですか?
などなど当たり前だけど、急に尋ねられると返答に困る素朴な疑問ってありませんか?
これは作中でたけちーが実際に疑問に思い、
知り合いに相談していくという士魂のテンプレなのですが、その知り合いの返しがどれも深く秀逸なのです。
皆それぞれ考えさせられ、時には笑わせてくれる、それでいて納得のいく答えを返してくれます。
この電波相談の締めは決まって乃木隊長です。
乃木隊長は死刑囚で構成された部隊の隊長で、彼も何かとやらかし凶悪な性格。
しかし面倒見も良く、一部になにかと慕われて彼独自の価値観がある模様。
実はこの漫画のタイトルである「イレブンソウル」が何かということも彼が語ってくれます。
これはたけちーが幸せって何だろうと乃木隊長に尋ねた際のことです。
———————————————————————————————————————–
士(モノノフ)とは・・・十の経験を一に帰結させる人種だと・・・
-略-
「一」つの事を成し遂げる為に「十」の経験を注ぐ。
一つのことを成し遂げるその瞬間・・・
そこに心の全てを傾けて生きる・・・
それが「志」ある生き方なんだと・・・・
そんな生き方ができるなら俺は「幸せ」だな・・・・
————————————————————————————————————————
「士」の「心」。
それこそがイレブンソウルという訳です。
ちなみに乃木隊長の外骨格兵装には「志」とペイントされており、
後に最終決戦に臨むたけちーの外骨格兵装にも同様のペイントが施されるのも熱い展開です。

 

無冠の傑作を是非

 

個人的に士魂はかなり楽しめて人に布教しているのですが、
よくある漫画大賞的なおススメに挙がることは皆無ですし、
そもそもの知名度が低すぎる気もします。
掲載誌もどちらかと言えばマイナーでしたしね。
SFバトル物と言うのも一定数の読者には響くかもしれませんが、
やはり人を選ぶ気がします。どちらかと言うと男性向けなのかな?
書店で見かけても、単行本の表紙を始めイラストに少し癖があると感じるかもしれない。
そういう著者も最初に単行本を見た時はちょっと思うところはあった。
実は作者である戸土野正内郎(とどの・せいうちろう)氏は、色覚異常があり色の大半を区別しにくいそうです。
桜と雪が同じ色だと思っていた時期があったとか後書で語っています。
まぁなんというかカラーは独特です。さらに言うと基本的にアシスタントを雇わないワンマンアーミーであり、その生き様からタイトロープダンサーの名を欲しいままにしているのだとか。
そんな先生ですが、物凄く描き込みが細かいことに定評がります。
その書き込みに加えて戦闘描写もスタイリッシュで、特に最終巻はバトル漫画の1つの境地といっても過言ではありません。
ほんと侍の斬りあいに言葉は要らないですね。

 

まとめ

・個性的なキャラクターによる笑いと涙と萌えと燃えの人間ドラマ。
・深層心理にあるドス黒い欲と極限状態で浮き彫りになる人間性。
・哲学的名セリフの大放出。
・圧倒的アクション。

公式応援Twitterアカウント@harigane5で最終巻の後日談や、
戸土野先生の落書きが公開されています。

ARIA-素敵なものは無限大なヒーリングコミック-

ARIA-素敵なものは無限大なヒーリングコミック-

生きていれば色々な体験をし、様々な感情を抱くでしょう。
楽しいこと、嬉しいこと、悲しいこと, etc.
しかし現代社会を生きる私たちはそんな当たり前の感情すらも忘れてしまうくらい疲れているのも事実です。
今回紹介するのは、そんな戦う現代人に素敵な癒しをもたらしてくれる作品です。

引用元https://comic.mag-garden.co.jp/aria/index.html

 

舞台背景

西暦2300年代の火星。火星はテラフォーミングされて水の星「アクア」と呼ばれていた。
物語は入植地の1つである「ネオ・ヴェネツィア」で動き出す。
ここは私たちが知るイタリアのヴェネツィアをモデルにした観光都市でありながら、
日本人の入植地が近接していることや四季があることから、日本文化の影響も受けている。

引用元http://www.mag-garden.co.jp/view.php?mode=view&select=comics&index=%EF%BF%BD%EF%BF%BD&page=2
そんなアクアに「マンホーム」(地球)から物語の主人公である「水無灯里」(みずなし・あかり)がやってくるところから始まる。
灯里は「ウンディーネ」と呼ばれるゴンドラ漕ぎになるべくやってきたのだ。
そんな彼女が一人前を目指す日々を切り取った物語です。

 

どんな物語なの?

ARIAは「日常の再発見」が主なテーマだと著者は考えています。
忘れたり見落としがちな事柄、人の温もり、季節や時間の移ろいなどを、
とにかく優しく丁寧に描かれています。
悪意がほぼほぼ排除されており、生命に関わる大事件や陰湿な展開は無く、
どこまでも平和で優しい世界が広がっています。

引用元https://comic.mag-garden.co.jp/aria/historia.html
ゴンドラ漕ぎの修行をしつつ、友人や先輩とお茶したり、遊んだり美味しいものを食べたり、
四季折々のイベントに参加したり、綺麗な景色を見に行ったり、
時には摩訶不思議な体験をしたりとまったりほっこりします。
完璧すぎるとか、むず痒くなるとも言えますがほんとピュア100%な物語なんです。

 

ARIAの素敵ポイント

素敵その1 登場人物が素敵


引用元https://comic.mag-garden.co.jp/aria/historia.html

3人は別々の会社でライバル関係なのですが、先輩の影響もあってかいつも合同練習に励んでいます。
実はこの3人の先輩は水の3大妖精と言われる超一流ウンディーネであり、
彼女ら自身も灯里たちと似たような仲だったりします。

作中ではこの師弟関係のお話もそこそこ出てきます。
この他にも街に暮らす様々な住人や観光客、
摩訶不思議な世界の住人がネオ・ヴェネチアの世界を彩ります。
時には郵便屋さんのお手伝いで集荷作業をしたり、
またある時にはトラゲット(渡し舟)の漕ぎ手をしたり、
貿易品のヴェネツィアン・グラス運送なんてことも。
ウンディーネには色々な仕事が舞い込んできます。
お得意様もいれば、一期一会の出会いもあります。
どの出会いでも灯里の素敵パワーが発揮され、
優しく素敵な物語を紡ぎます。

 

素敵その2 ネオ・ヴェネチアが素敵

日本に住む私たちにとってヴェネチアと聞くとただ漠然と水の都くらいの印象ではないでしょうか。
ネオ・ヴェネチアはそんな印象を和のテイストで彩った、
非常に親しみやすい架空の都市です。
現実のヴェネツィアの観光名所も多数登場します。
有名な場所ではサン・マルコ広場やカナル・グランデを始め、ドゥカーレ宮殿やカフェ・フローリアン、
ため息橋やリアルト橋などでしょうか。
細かいものだと墓地の島サン・ミケーレ島や不幸の石なんかも作中に登場します。
というか描写だけなら有名どころはほぼほぼ網羅されています。
それに加えて漫画ならではの地下都市や浮島とよばれる浮遊都市なんかもあり、
アクアが未来の火星のお話であることを意識させられます。
文化面も現実世界を踏襲している描写が多々あります。
ヴァポレット(水上バス)やトラゲット(渡し舟)、
ヴェネツィアン・カーニバルやヴェネツィアン・グラスと言ったもの。
レデントーレや海との結婚というイベントや、
年越しでお豆を食る(日本で言う年越し蕎麦的な)とか、使い古した物を投げ捨てると言った風習なんかも。
お花見や風鈴売り、お稲荷さんに千本鳥居と言った日本人的要素も。
ネオ・ヴェネツィアはこれだけでも魅力に溢れる舞台であるのは間違いありません。
しかしこれは著者が考えるにこれは表の魅力なのです。
灯里のセリフに以下のようなものがあります。
———————————————————————————————————————–
「私…地球(マンホーム)出身でして街はどこも美観化と合理化が進んでいてスッキリしたもんです」
「買い物も仕事もこことは違って全部家でできるし便利ですよ」
「でも…そのスッキリして便利な街の姿が物足りなく感じてしまうんですよねー」
—————————————————————————————————————————
これは第一話でのセリフです。
現実世界でも世界規模で都市化が進んでいますし、
ネット通販などを利用すれば、様々なモノが手に入ります。
物語の舞台ではテラフォーミングや星間旅行もできる程進んだ技術を持っているので、
確実に現代日本以上の生活水準でしょう。
言い方を変えれば、生活に困ることもなく、
ただ何となくでも生きていけるという社会になっていると想像できます。
それを安定と取るか味気ないととるか・・・
きっと灯里は後者だったのでしょう。
便利で何でも手に入るからこそ、
自分自身の存在意義に疑問を感じてしまったのかもしれません。
無粋な考えかもしれませんが、東京で社会人をして疲れたから地方に帰って実家を手伝う的な感じに近いのかもしれませんね。
著者は現実のヴェネツィアに行ったことはありませんが、
本やネットなどの情報によると総じて観光には良いけど、
住むのには厳しい都市と評されています。
車や自転車は禁止されていますし、
水害や地盤沈下などの問題もあるそうです。


また有名観光地であるが故に都市のキャパシティ以上の人がなだれ込み、
現地の人の生活に支障をきたしているとか。
また観光客のマナーもよく問題になっています。
ARIAでもその様な問題が描写されています。
ヴェネツィア同様に車の乗り入れは禁止されますし、
アクアアルタ(高潮)で都市機能が麻痺すると言った現実とリンクした物。
漫画独自の問題として、気候管理が人力のマニュアル調整なので残暑などの季節のズレが生じるなんてことも。
しかしそんな不便も灯里を始めとするネオ・ヴェネチアの住人にとっては、
受け入れ楽しんでいる節が多々あります。
裏の魅力は、読者に人が本来持っている穏やかで寛容な心を励起させるのではないでしょうか。

 

素敵その3 恥ずかしいセリフが素敵

ARIAには名言(迷言も!?)・名シーンがいっぱいです。
著者は何度もARIAに救われてきました。
嘘偽り誇張表現無く本当の話です。
大学進学で地元を離れ見ず知らずの土地で暮らすことになり、大学のレベルについていけず挫けそうだった時、
病気になって自暴自棄になった時、他にも著者は至る所で挫け逃げてきました。
そんな時にARIAに助けを求めるのですが、
キャラクターのやり取りでほんと泣いちゃうんですよね。
幸福論しかり人生論だったりするのですが、
こういった格言にありがちな堅さとか偉ぶった感じは一切ありません。
ほんと自然に心にすとんと広がっていきます。
例えるならコーヒーにミルクを入れてかきまぜる感じですかね。
そんな素敵恥ずかしなセリフの中で著者が気に入っているものを幾つか紹介します。

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「そんなモノ(苦しい時や悲しい時)は
より人生を楽しむための
隠し味だと思えばいいじゃない
自分の中で変えてしまえばいいのよ

何でも楽しんでしまいなさいな
とっても素敵なことなのよ
日々を生きてるってことは

がんばっている自分を素直に褒めてあげて
見るもの聞くもの触れるもの
この世界がくれるすべてのものを
楽しむことができれば
この火星で数多輝く水先案内人(ウンディーネ)の
一番星になることも夢じゃないわよ」
—————————————————————————————————————
「あの頃の楽しさに囚われて
今の楽しさが見えなくなっちゃもったいない」
「あの頃は楽しかったじゃなくて
あの頃も楽しかったよね」
「きっと本当に楽しいことって比べるものじゃないのよね」
「今楽しいと思えることは今が一番楽しめるのよ」
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「いつでもどこでも何度でもチャレンジしたいと思った時が真っ白なスタートです。
自分で自分をお終いにしない限りきっと本当に遅いことなんてないんです」
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誰がどんな場面で言ったのかは是非原作もしくはアニメ作品を見ていただきたいので省略しましたが、
ARIAにはまだまだ沢山の素敵恥ずかし名セリフが存在します。
人によっては理想論すぎて共感できなかったり、
頭の中お花畑と吐き捨てられそうでもありますが、
それはそれで仕方ないとも思います。
シチュエーションは違えど原作でも灯里はこう言ってますし。
————————————————————————————————–
「その人が嘘モノと感じるならそれはその人にとっては嘘モノなんでしょう。
人の価値観は十人十色ですもんね。
でも貴方が嘘モノだって言われて傷つくのは、貴方の想いが本物で大切なものだからですよ。」
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ほんと人はそれぞれ個性も体格も思想もなにもかも違います。
でもそれこそが人の味なのではないですかね。

引用元https://comic.mag-garden.co.jp/aria/historia.html

 

製品情報

ARIAシリーズは、天野こずえによる漫画です。基本的に一話完結式物語。
原作漫画は前日譚であるAQUAが全2巻。本編であるARIAが全12巻。AQUAはエニックス版(絶版)とマックガーデン版(新装版)が存在する。ARIAはマックガーデンより出版されている。この作品から読み始めても内容は理解できる。
今から購入するのならば完全版である「ARIA The MASTERPIECE」全7巻がおススメです。
連載当時のカラーページが完全再現されており、
上質紙ベースの退色しにくく保存性にすぐれた本文用紙など完全版に相応しい仕上がりになっています。アニメ展開されており、テレビアニメが3作品、OVAが1作品の計4作品。映画上映作品もアリ。


ドラマCDや小説、インターネットラジオ、コンシュマーゲーム・モバイルゲーム化もしている。
アニメ音楽は一聴の価値あり。

 

 

 

Only Sense Online-隙間産業万歳なゆっくり生産職ライフ小説ー

Only Sense Online-隙間産業万歳なゆっくり生産職ライフ小説ー

ゲームでもリアルでも「効率」が求められる今日この頃。
効率を求めるのは悪いことではありませんが、
そればかりだとツマラナイし、疲れませんか?
今回紹介するのはそんな決まりきったテンプレートなんぞ御免だというアナタに薦める小説です。

あらすじ

【センス】と呼ばれる能力を組み合わせ“唯一”の強さを目指すVRMMORPG――「オンリーセンス・オンライン」
親友タクや妹のミュウたち廃ゲーマーが攻略に突き進む中、「ゴミ」「使えない」と名高い不遇センスばかりを装備してしまったゲーム初心者のユン。
できることといったら、ひたすらポーションを生産することだけ・・・。
そんな日々の中、ユンは“トップ生産職”として活躍するお姉さん・マギと出会う!
誰も知ることのなかった、アイテム生産や補助魔法の可能性に気づいたとき、サポートスタイルに革命をもたらす“最強”の初心者プレイヤーが誕生する――!?
(公式サイトより抜粋:http://www.fujimishobo.co.jp/sp/201404onlysense/)

ゲーマー目線として楽しむ小説

著者はゲームをプレイするにあたり、wikiや個人ブログなどの様々な攻略情報を見てプレイする派です。
ゲームによって差はまちまちですが、必須スキルとかテンプレ装備という物はどんなゲームでもあるでしょう。
やっぱりゲームをするなら強くありたいと思うのは当然の心理でありますし、
楽をしたい訳では無いですが、難しすぎたりしてストレスを抱えながらゲームをするのはどこか間違っていると思うのは自分だけだろうか。
当然スキルや装備などによって差が生まれますし、不遇スキルとかゴミ装備とカテゴライズされる要素がでてきます。
本作の主人公(兼ヒロイン)であるユンはそんな不遇と向き合うことから物語は始まります。
サポートに徹しようと考えて合成や調合、付加(いわゆるバフやデバフ)に錬金と言ったスキルを獲得し武器は弓を選択する。
意気揚々とログインしたが待っていたのは何故か性別転換し女性キャラクターになっていたユン(syunと入力する筈がsを打ち損ねる)。
この時点でもデリート案件ですが、姉妹に脅迫という名の説得を受け続行。
さらにスキルのダメっぷりを説明されたり、武器の扱いの難しさを身をもって体験する。
著者ならこの時点で最初からやり直すと思いますがユン君はへこたれません。
試行錯誤を繰り返し、時には先人のアドバイスをもらいながらスキルや仕様を解き明かしていきます。
例えばこの作品では、ポーション1つ作るにしてもこの世界には様々な方法があります。
材料を煎じて作る調合。作成済みアイテムレシピからショートカット調合。下位素材からの錬金。
手順を工夫して、乾燥させたり濃縮したりと様々に一手間を加える作業描写はとても楽しそうです。
この様な細々とした作業って案外癖になりませんか?
ポーションを作ろうとして毒物を生成するというお決まりも有ったりして和みます。
リアルでもゲームでも動作を繰り返すことによりレベルは上がるものです。
御多分に漏れず本作でも様々な行動でレベルが上がります。
移動速度を上げる補助魔法では戦闘以外に街中での移動中に発動していればOKです。
面白い例だと付加で速度を上げて畑を耕したり、攻撃を上げてインゴット作成なんてことも。
足りない物を補って使っていくスタイルで徐々に出来ることを増やしていく感覚がまた良いんです。
このレベリングと並んで面白いのは、様々な(不遇)スキルのシナジーです。
ユン君は鷹の目と言うスキルを獲得しています。
これは遠視効果メインで弓などの遠距離職には良いのかもしれませんが、
プレイヤーの間では何故か微妙な扱いと聞きます。
しかし実際に使ってみると暗視効果があり夜間戦闘にも効果があることが解ります。
これだけでも不遇脱却要素ですが、実はこれ副次的効果だったのです。
これ以上はネタバレもいいとこなのですが、
使えないと烙印を押されていたのが1つの発見で輝くのは読んでいてとても興奮します。

Only Sense Onlineの魅力とは?

ではこの作品のラノベ的面白さについても語っていこうと思います。
著者的には2つ大きな魅力があると思います。
まずは何といってもユン君の天然さでしょう。
機械の誤認で性別が女性になるという面白い(ありえない?)設定から始りますが、
なんだかんだでゲームをマイペースに楽しんでいきます。
のんびりポーションを作ったり、畑を耕したり、料理をしたり。
山に登り鉱石を採掘したり、川で泳いで宝石の原石集めに勤しんだり。
時には知り合いからアイテム作成の依頼を受けたり、
またある時は新人プレイヤーの面倒を見たりと人の輪を広げていきます。
NPCキャラクターとの交流も忘れません。
とあるイベントではユニークモンスターの幼獣と仲良くなり、
世話をしていて付いた二つ名が「保母さん」。
なんやかんだで有名になりギルドへの勧誘がしつこくなるわ、
PKに目を付けらりたり、突発イベントに巻き込まれたりと大変です。
大変と言えばユン君の容姿や言動もイロイロ問題です。
姉妹に負けず劣らずの黒髪スレンダー美人さんになるも、
素が男性なので男言葉でプレイするために、そう言うロールだと勘違いに始まり。(いわゆる俺っ娘扱い)
下手に女子力が(異様に)高いがため、主人公でありながらヒロインも兼任し。
その容姿から、服飾関連の生産者にはコスプレまがいのモデルに抜擢されたり。
宴会が始まれば厨房の鬼になったりと忙しいゲームライフです。
リアルのユン君を知らないプレイヤーからは、友人とのやり取りを聞いて盛大に誤解される薄い本展開にもなったりと。
苦労が絶えませんが、そんな残念で可愛いユン君のonly oneな日常が面白いのです。
2つ目の魅力は安心して読める優しい世界ということでしょうか。
ログアウトできないとか、ゲーム内で死んだら現実でも死亡するなんて要素は全く無く。
俺TUEEEEな無双主人公でも無く、むしろ守られる描写の方が多いかもしれないし。
まぁユン君は弱い訳では無いし、戦闘能力はそれなりにあるのですが今一つ気が付いていない点も面白いのではありますが。
よくあるハーレムとは無縁だし、恋愛要素も殆どありません。(むしろプリーズ)
様々な思想や陰謀が渦巻くなんてことも無くは無いけど、人が本当に不幸になることは無いのも良い点。
起承転結が無いとも言えるかもしれないし、
チャンバラ時代劇とか特撮ヒーロー物とか日常系のような安定感があるとも言える作品なのです。

実際に読んでみた感想

この作品にツッコミどころや違和感もない訳ではありません。
例えば、本作はゲーム物として謳っているのに、
その根本となるルールや仕様などの説明が大雑把でご都合主義がそれなりに目立つ事だったり。
また実際にオンラインゲームをプレイしたことが有るの人からすれば解るかもしれませんが、
基本的なネチケットや迷惑プレーに対するスタンスがどうも目に付きます。
しかし、そう言ったネガティブ要素を踏まえても、
創意工夫次第で何でもでき、マイナーとも独創的とも言えるプレイスタイルで遊びを開拓していく様は、
レベリングや素材採集などが苦にならない人種ならば、共感したり感銘を受けるのではないでしょうか。
なんと言うか頭を空っぽにして気楽に読んでいける作品であり、
ゲームの実況動画やプレイ日記を見ている感じで楽しむ作品だと著者は受け止めています。
そんな夢を見せてくれる作品「Only Sense Online」は、
2017/10/27現在、原作小説1~13巻、外伝小説1~2巻、公式漫画1~5巻が発売中です。

【作品情報】

タイトル     Only Sense Online‐オンリーセンス・オンライン‐
出版社      KADOKAWA
著者       アロハ座長
イラスト     ゆきさん
コミカライズ   羽仁倉雲

原作小説

外伝小説

公式漫画