NHKプロフェッショナル仕事の流儀/羽田空港のビル清掃のトップを追う


羽田空港でプロの掃除職人として500人のトップ西津春子氏の特集

http://www.nhk.or.jp/professional/ より

ビル清掃という仕事の地位は世間的に低いと、成田空港の清掃に携わる日本一のビル清掃で500人のトップに立つ新津春子 氏でさえも言うのだから少し驚かされます。(イメージ画像はNHKの番組ホームページから引用)

でも新津氏はそんなことを気にならないそうです。「清掃という仕事が好きだから」実に肩の力の抜けたナチュラルな物言いでした。

イメージ画像の新津氏がじっと見つめているのは、汚れを落とし、きれいにする対象の本来の美しさを復元できるまで(作られてホヤホヤの状態にまで近づけるように)入念にチェックしているところです。

汚れがきちんと落ちているかどうか、器具の裏側までも見落とさずに手鏡を使って確認を怠りません。メガネまでかけて入念に清掃します。そんな新津氏の経歴には実は深いドラマがあることをNHKプロフェッショナル仕事の流儀2015年6月1日の放送が迫りました。

2016年5月21日追記あり!

世界一”のカリスマ清掃員が教える 掃除は「ついで」にやりなさいの表紙画像

amazonサイト内より 世界一”のカリスマ清掃員が教える 掃除は「ついで」にやりなさいの表紙画像より

ついでにやるというズボラで掃除はやりたくない人のためにぐっとくるタイトルですね。

気になる方は書店でチェックしてみるとなるほどと思うことも多いかもしれません。著作が随分反響を読んでいます。他の著書にも、

コミック付きのものや、新津さん自身の生き様を追うなどお掃除の世界に深く触れることができそうです。

第5回の全日本ビルクリーニング技能競技会大会で最年少優勝する快挙

http://www.j-bma.or.jp/fair/fair07/grachan/index.html,より作成

 

新津春子(44歳)は、清掃技術を競う大会で史上最年少優勝の持ち主

2年連続日本一の羽田空港の清掃職人新津春子氏は500人のスタッフのトップ

2013/2014年と、羽田空港は、「清潔な空港」世界一の空港として2年連続で栄誉に輝きました。

床やトイレなどにおいて新津氏は80種類もの洗剤をを用いて、汚れた施設をピカピカにし、利用するお客さんに気持よく使ってもらおうと高い技術と心配りで仕事に向かいます。それが新津氏の職人技の一つの現われなのかもしれません。

空港の清潔さや快適さなどを評価する 「 Best Airport Terminal Cleanliness 」 部門において、 羽田 空港 ( 第1・第2 国内線旅客ターミナル 、国際線 旅客ターミナル )が、世界 第 1 位

http://www.tokyo-airport-bldg.co.jp/files/whats_new/439_0415_0206.pdf より

そのスタッフ500人を束ねる45歳の女性に注目が集まっています。

その女性は新津春子氏45歳、株式会社エアポートマックスに所属し、空港のクリンネスをリードするビル清掃の職人です。

仕事の成果をみれば、清掃前と清掃後の仕上がりを比べれば一目瞭然、まるで新しく完成した建物のように汚れた空間が浄化されます。

番組中では、体調を崩して長期間休み再び復帰した同僚が恐縮しています。

「来てくれてうれしい。みんなも顔を見たがっていた」とシフトで迷惑をかけてしまってと申し訳なさそうに謝る社員の心を和らげている場面が映ります。

厳しく叱り、体調管理のできない部下を叱り飛ばすような会社ももちろんある中、新津氏は優し過ぎるのではないかと筆者は少し心配になったほどです。

そんな新津氏も、決して順風満帆にビル清掃の職人として技術に長けるようになったわけではありませんでした。

父を残留日本人孤児として中国で日本でいじめにあった若い生い立ち

家族が日本語に慣れない中で、日本の学校生活では「中国へ帰れ!」といじめられ深い傷を負っていたのです。中国生まれの日本人としては中国にいた時代は「日本へ帰れ」といじめを受けたのに、日本に来たものの結局どちらの国でも居場所がなく辛い日々だったそうです。

家族も日常生活に必要なお金に余裕もなく、若い頃から新津氏は、言葉がわからなくてもできる清掃の仕事に就くことになりました。

働き始めた当時、ビル清掃で頂点を極めていく存在になる運命にあるとは予想もしていなかったことでしょう。

よごれ落としの権威との出会いから1977年で史上最年少で平成9年に「全日本ビルクリーニング技能競技大会」で優勝する。そこまでの経緯。

新津氏23歳の頃に鈴木優(すずきまさる)氏という上司に出会います。鈴木氏はよごれ落としの権威の人で、新津氏に目をかけて厳しく育てていきます。

新津氏は単なる仕事ではなく「清掃技術を職人」としての高みを目指そうと仕事への情熱を持てるようになったと言います。

新津氏は鈴木氏の始動をどんどん吸収して技術を高め、やがて全国ビル清掃技能大会に出場を勧められるます。清掃の技術に対して人一倍自信のあった新津氏は当然1位になると踏んでいたのが、2位に終わります。なんで1位になれなかったのか疑問でならなかった新津氏でした。

鈴木氏は新津氏のやる気や技能の上達に一言も褒める言葉なく、「もっと心をこめなさい」と抽象的な印象の言葉ばかりだったといいます。

新津氏はなんとか認められたい気持ちで必死になっているのに、鈴木氏が「心の余裕がないと良い掃除はできない」と2位に終わった新津氏にぽん肩を叩かれたのように諭したのです。

絶対1位になるはずなのになぜ、なぜと自問自答を繰り返した新津氏に「心に余裕がないと」という意味が深く響きます。

確かに自分の清掃の技術は高いはず。でも、いかに自分の清掃する技術が高いのか「自分が認められるための清掃」にしがみついていたと気が付き何かが吹っ切れたようです。

清掃技術の目的は、使ってくれる人への心配りであり、使ってくれる人が快適だったり、くつろいだり、ほっとするための心配りのための目的がある。

と新津氏は高い清掃技術に、その本質にたどり着いたようでした。

技能競技大会に優勝したことを鈴木氏に話すとあれだけ褒めてもらえずに頑張っていた新津氏に

「優勝するのは分かっていましたよ」

と声をかけたそうです。やっと鈴木氏に認めてもらったんだと感無量のようでした。今はお亡くなりになっている鈴木氏を思い出している新津氏は心なしか目が潤んでいました。美しい師弟愛ですね。

よごれ落としの1日に密着

番組が新津氏を見つけたのは朝の6時30分。新津氏は微笑みながら、

「スタッフに早いですね」と挨拶します。

筆者はここで、取材される新津氏の方が仕事の始まりが早いじゃないかと画面の前でツッコミたくなります。

50段以上ある階段を使いウォーキングの代わりと言ったかと思えば、5kgの鉄アレイを20分以上上げ下げします。それも20分以上時間をかけるのです。

朝昼夕(昼だけは少し軽いそうです)毎度体力を高める努力を続けているそうです。ビル清掃の人が筋トレする姿を初めて筆者は知りました。

体力がないとできない仕事なんですと苦労の様子を見せずに現場へ行きます。しかも洗剤はおよそ80種類から選び清掃するのです。

メーカーと開発したオリジナルの清掃器具まであるのだとか。

番組では、空港内の汚れをまず目を通します。見えて見えて仕方がないようです。番組のメインに、ステンレス製の水飲み器への清掃が放送されました。

新津氏はステンレス製の虹色を出すまで仕上げるイメージが頭に既にあるようです。

ステンレスも最初からゴシゴシ磨こうとすればキズがつき、ステンレス本来の輝きも出ないと、最初は丁寧に柔らかく、汚れを浮かせます。

汚れを浮かべさせたところで洗剤を変えて、力を軽く入れて落とします。

10秒以上洗剤がとどまらないように霧吹きをしながら清掃を進めます。まるで自分の子どもの世話をするように、随所に優しさが画面から伝わります。

~しちゃった、~かなという語尾を出しながら清掃を進める新津氏の作業姿勢には、キレイにする単なる物体ではなく、まるで命を扱い、美しさを再び取り戻すお医者さんのようにも感じさせるものがあります。

家庭用に使える換気扇やお風呂場のカビの落とし方は参考欄のリンクを貼りますので、NHKサイト内のテクニックを試して見て下さい。

まとめ/新津氏の考えるプロフェッショナルとは

NHKの番組制作班が問います。プロフェッショナルとは?

目標を持って日々努力し、

どんな仕事でも心をこめてできる人だと思います。」

番組で感銘を受けたのは誰が仕事をしたかなんて名前が知られなくてもいい認められなくてもいい、利用してくれるお客さま(発注側が)満足してもらえるように心をこめるおもてなし職人だと筆者には感じました。

職人といえば自分の扱うモノへの完成度の高さを形容する言葉のようで、実は使う人の気持ちへ心配りできるメンタリティを持つという職人という頑固なイメージからは新津氏は程遠い人だと感じます。

汚れについてのコンシェルジュのような方のようで魅了されました。

新津氏が汚れに向かって語りかけて「落ちてくれるかな?」と語りかけながら仕事に向かう姿勢に心があたたまる思いです。

様々な会社が顧客の満足を追求する中で、会社の認知度を上げたいのはごく自然なことです。新津氏がもっと脚光を浴びたいとか、所属する会社の知名度が上がるとか、社会から認められたいという気持ちだってないはずはないと思います。

好きだから、日陰だろうと気にしないといいつつ脚光を浴びているというのはなんらかの真理がある気がします。

仕事が終わってどうします?と番組側から始めると1時間自分の家を掃除してから寝ますと答える新津氏にまだ掃除ができることに驚くと同時に深く尊敬の念を抱かされました。

参考リンクなど