ガイアの夜明けも取材/売り場が変わった?!行動観察で書店の新たなニーズの発見と店内改装後

書店の売り場改善に行動観察メソッドを用いた立ち読みカウンターの設置の様子

https://www.ogis-ri.co.jp/event/1209964_6738.html ビッグデータ『データ利活用』を成功に導く「データ分析支援ソリューション」より

 結果として現れた売れた売り場の改善実績

店全体に占める売上の新書の占有率が3.9%から4.2%
平均して上がっている!
「池上彰の伝える力」ハードカバー本が59冊から改装後85冊
怒らない技術改装前29冊から改装後74冊

売上アップした背景とはなんでしょうか!調査時点で震災の沈んだムードの中で消費は振るわないのは仕方がない状態だったのかもしれません。それでも現場の改善により本はより売れるようになったといいます。

それに大きく貢献したのが行動観察メソッドでした。前回の行動観察Xについて、所長松波晴人氏のガスコンロの改善が、台所で使われている様子を実際に現場に行って見つけ出し、特許取得にまで結びつく経緯を特集してみました。

ガス会社の研究員がガスコンロが使われている様子を観察してガスコンロを改良した。それだけで終わらないインパクトがあるのです。

この行動観察メソッドが決してガス会社業界やガスコンロ製品にのみ有効とは限らない興味深い事実について特集したいと思います。

大阪市本町紀伊國屋書店が売りたい新書にも関わらず

調査当時の紀伊國屋書店本町店 630坪の中にはおよそ30万冊を在庫していたそうです。

大阪市中央区32階立ての1Fという立地で、周囲にはオフィス街が並んでいます。顧客のおよそ6割がビジネスマンであって、常連客も 多いのに新書が売れていないのをお店の課題としていました。

6~700円で最先端、最新の情報が得られるお買い得な新書に力を入れているも関わらず、ぱっとしません。客の行動を観察しサービスの改善を提案するスペシャリストと評判の行動観察研究所の所長松波晴人氏がこれを請負います。

どこに何があるかわかっている常連のお客さんが新刊を手に取りながら買わない

松波晴人氏は調査観察者が書店経営に詳しい人物でなくいことを自覚しています。書店のプロでなくても、(行動観察研究所は)人間についてのプロだとの自負から大阪市にある紀伊國屋書店本町支店に直接出向き、調べる対象となる人間の数(サンプル調査数)が少ないことを気にしません。

今のところ言葉になっていない無意識的に取る行動を環境心理学や認知心理学によって裏付けされた原因を浮かび上がらせることに行動観察メソッドの斬新さがあります。

松波晴人氏はある顧客の手にとった本を顧客が去った後に調べまます。プラモデル雑誌の新刊でした。さらにその後を調べると文庫の新刊で東野圭吾ミステリーでした。結局、最初の観察者となった顧客が15分で帰ってしまったのです。

松波氏は、どこに何がおいてあるか迷わないでお目当ての本にたどり着く様子から、いつもの常連さんだと見立てます。

大通りまでの単なる通路として店がスルーされている

午前から行動観察をはじめた松波晴人氏はお昼になり、顧客の歩くスピードに違和感を感じます。顧客はたったと歩いて行くお店が大通りに素通りされていることを見つけたのです。書店の通路が商店街の大通りに抜ける近道に使われていることに課題を見つけました。

松波氏は書店とはどういうお店が顧客を幸せにするものなのか、考えているようです。

書籍店の魅力とは、

通った時に未知の世界の本に出会えること/書店の通路を進む時に全然知らないものに出会える

この書店はその偶然性が不足しているのではないか?

逆説的に検索機能性を高くすることに夢中になっている書店作り、つまり欲しい本がすぐ見つけられる書店というアプローチも当然あるはずです。

無論リアル書店でネット書店のようにすぐに本が見つかるならばAmazonのような販売システムには競争で圧倒的に不利です。リアル書店とネット書店の方向性は違って当然です。

紀伊國屋書店大阪市本町支店への利便性向上という数値目標の追求とは次元が異なるものでした。

松波所長率いる観察チームのリアル書店への提案のために実際に来店される顧客をどう行動観察したのでしょうか?

大阪ガス行動観察所が協力した利用客の行動観察

松波晴人氏の行動観察研究所で寝転がりながら本を読むシーンがガイアの夜明けで放送されていたことがあります。

画一的なパーティションでもなく大組織にありがちな「シマ」というようなスペースとは違うものでした。いろいろな角度から考えて欲しいと願う松波晴人氏の方針が反映されています。

「いかにくつろいでもらうか」によって業績は上がる行動観察メソッドはに

“行動観察では目の前の人をいかにして幸せにするかというマインドを非常に重要”

視するメソッドのひとつの強いこだわりを感じさせるのです。(講談社現代新書【ビジネスマンのための「行動観察」入門】の60p中より)

目的買い、息抜き買い、暇つぶし

・座り込んで読んでいるお客程、結局は買わないかも

この行動観察は所長と他二人の調査合わせて3人で行われています。腰をおろし込んで読んでいるような立ち読みの姿をしている人がレジまでたどり着くことは稀なようです。

目的買いのお客様はこれを買いに行くという姿勢ですから目的とする本が見つかれば対応は分かりやすい。

息抜き買いは、自分に何か刺激を受けさせて自分の精神状態に変化を与えたいものです。これは様々な書籍を用意することで選んでもらいやすいでしょう。その演出が、今回松波所長の

通った時に未知の世界の本に出会えること/書店の通路を進む時に全然知らないものに出会える

この書店はその偶然性が不足しているのではないか?

にたどり着くのであれば目的は達成されそうです。

最後の暇つぶしの顧客には家で買ってもらってゆっくり暇つぶしをしていただければお店も顧客もWINWINになります。

暇つぶしで来店されている顧客のうち腰をおろし込んで座り読みしている場合は購買行動を取る傾向が少ないことがわかってきたそうです。

 

渋谷のツタヤで立ち読みしている画像

2011/08/26 
読みたガール-Meets☆Shibuya   yae onoda 撮影より

(画像イメージ:http://yaepeso.blogspot.jp/2011/08/meetsshibuya.html

立って読むお客は膝をかがめながら棚へ寄りかかる

観察チームは立ち読みしている顧客の姿勢に気が付きます。前回のガスコンロでかがんでいた姿勢に注目された松波氏。その観察チーム3人は長い時間立っているとどこかにもたれかかりたい心理を見逃しませんでした。

それがトップ画像のオシャレなバーのような「ちょい読みコーナー」併設の提案へと至るのです。

新書の棚割りは売り手も書い手も管理は難しいイメージ

http://sorainutsushin.blog60.fc2.com/blog-entry-2065.html より 新書の棚割りは売り手も書い手も管理は難しい

(よく見かける新書の棚割りの写真、紀伊國屋書店大阪市本町支店のものではありません)

肝心の新書コーナーでなぜか背表紙を必死に見つめてのカニ歩き

観察チームは、新書の探し方の不便な様子を 目撃します。お目当ての新書を見つけようにも出版社で同じ色のカバーにどのタイトルも作者も同じように見えてしまいます。

統一感を出すための出版社の工夫がここではむしろ仇になっています。顧客はただじっと見つけたい本や買おうとする本を手に取ろうにもじっと背表紙を見つめる他ありません。

そして、これでもないあれでもないと探す動きがまるで横に移動するさまを「カニ歩き」と評しています。

書店はこういうものだといってしまえばそれまでですが、観察チームはできるだけ人気のある新書を斜めに寝かせる陳列をし、背表紙ではなくなるべく表紙を出すように顧客に見つけてもらえるよう改善しました。

行動観察から導かれた根拠のある改善案

観察チームは大きなテーマにできるだけ体に負担の少ない立ち読みの場所の提案に頭をつかうことになります。

立ち飲み屋で立ちながら疲れないようにする無意識に取る人間の行動とはどういうものか?

ショットバーでくつろいでゆったりするための肘をつく姿勢とはどのようなものか?

書店とは直接関係のない場所まで通い、書店でくつろいで立ち読みして、最後には家まで買って帰ってもらうという順を追った購買行動を分析しつつ観察後からレポートを作るまでまで4日間という短さで観察チームは書店に打診をかけます。

書店経営のスペシャリストの改善事例にならうわけでなく

行動観察研究所チームはビジネス雑誌ダイアモンドと日経スペシャルガイアの夜明けの取材を受けながら紀伊國屋書店本町支店の改善を依頼されるのです。

ガイアの夜明けでは新書の販売促進に当てられた時間はわずかなものでした。

書店の性質上、長期間にわたる改装はできません。行動観察研究所が行った提案を受けてわずか3日の改装で書店がどれほど業績改善に結びつくかは数字上予測の難しいものだったはずです。

売上を何割伸ばしたい、だからこの部分とあの部分は変更しようという改善とは質が違います。見えないニーズを掘り起こし、それに応える根拠のある提案も、売上が何部上昇するとか、来店数を何%増加させるといった数値的指標が先にないように見えるのが行動観察による売り場改善の興味深いところです。

そんなことをされたら店が困ると書店側に一時困惑も

紀伊國屋書店大阪市本町支店の店長佐藤氏は柔軟な人柄だと松波所長は感じていたそうです。震災後の暗い雰囲気の中で「元気の出る書店づくり」の方向性に松波所長は共感していたとあります。

観察チームは繰り返しになりますが書店経営など全くの素人です。上から目線でこうした方がよいといった類の改善命令という雰囲気ではなく顧客がくつろいで気分で来店されるにはどうしたらよいのか書店員と共に考えて対案を一緒になりながら作っていくというものです。

佐藤店長は各部門の担当者に任せた店作りを心がけていたそうです。

テレビでは新書コーナーの責任者も同席をしていました。所長の立ち読みにバーカウンターのようなスペースを作るという提案には、そのような場所ができればカバンから書類を広げて仕事をするようなお客さんが必ず現れるだろう。お店の回遊性にマイナスに働くのではないかと意見しています。

松波所長は、すぐに手書きのメモを買いて一人辺りの横のスペース幅を縮めることで、本当に本しか立ち読みできない形態に変更したらどうだろうかと相手の立場に沿います。

この人なにを言っているんだろう

かがまないで書店を利用してもらうという顧客の姿勢に負担を減らす対案

松波氏はレポートで書店に対する行動観察メソッド採用した最大の成果は

イノベーションをおこす書店従業員様の文化

と結んでいます。

松波氏はテレビで「成功体験を繰り返して少しでもよりベターば
方向へ行くということをお手伝いしたい。」とあくまで主役が書店従業員であり、自分が黒子なのだと控えめな姿勢です。

幹線通路からそれたコーナーと柱の影で目立たない店の中央部にありながら、足を運んでもらえなかった顧客が賑わうように変わったのです。

それでも書店従業員が観察チームとの打ち合わせで提案を受けた時には

  • 「(この観察チームは)なにを言っている言っているんだろう?」
  • 「(この観察チームは)信じていいかわからない」

とかなりの戸惑いや疑問が生まれたようです。

  • 「今までの”当たり前”
    をいい意味で崩してもらえた」

イノベーションが起きた対応しようではなく、イノベーションをおこす側に紀伊國屋書店大阪市本町支店が立てたのだとしたら、

目の前の人をいかにして幸せにするか

「行動観察のメソッド」が書店員内部の意識改革を果たすことへの成功のための重要なメソッドとして顧客を見る目が肥えたのではないでしょうか。

行動観察メソッドがこうした今までになかった工夫が生まれました。

局所的なガスコンロや書店の改善にとどまらず、さらに様々な商品やサービス業態へ行動観察メソッドが広がっていくことで顧客を見るまなざしに多様な変化が起きることでしょう。

参考リンクなど

オージス総研2013-11-6に行われたビッグデータ分析×行動観察、イノベーションを創出する分析コラボレーションセミナー【秋葉原UDX】内にプレゼン用資料と思われるデータ

ビッグデータ『データ利活用』を成功に導く「データ分析支援ソリューション」のPDFデータ内に大阪ガス行動観察研究所 研究所がどのような方針で書店と協力しながら売り場を改善していった概要が分かります。

ビジネスマンのための「行動観察」入門 (講談社現代新書) 新書 – 2011/10/18Amazonへのリンク Kindle版は702円 印刷された新書が821円となっています。5つ★評価で4.0を超える良書のようです。

読んでいられるほど時間がない方はざっくりと、5分で理解するYoutube動画を見るだけでも参考になるのかもしれません。

松波晴人氏はガスコンロを使う際に体をかがむ姿勢を改善するという点に大きな関心を寄せていました。書店で体を屈めて長時間立ち読みする書店利用者にくつろいでもらいたいという心配りです。

逆に、会社内の社員の行動が机とイスの上でじっとしている点を行動観察して、現場に会議ならではの机と椅子を外して実績を出したのが、椅子とパソコンをなくせば会社は伸びる!という著書に現れたように感じます。座っていることで時間が有効に使われていないという能率改善はビジネスでくつろいでいる場合ではないという考え方になるのかもしれません。

外部から就任した社長が社員の行動を観察して改善したと思われる事例:社内PC全履歴管理Sep/椅子とパソコンをなくせば会社は伸びる!を参考に